CHAI WORKS

黒執事二次創作サイト。チャールズ・グレイ、エリザベス、劉など。

【黒執事】劉×藍猫 SS

微エロ、展開なし、落ちなし。 


 

兄様が時々別の女を抱いていることを、私は知っている。

兄様は私にあらゆる性的な技巧を教え込んだ。どうやって男を誘惑するか。喜ばせるか。快感を与えるか。それは半分は兄様自身の快楽のためであり、もう半分は敵から情報を引き出したり罠に嵌めるためのものだった。それでも兄様は私が他の男と関係を持つことを固く禁じた。あくまでも餌をちらつかせておびき寄せるだけ、と言って。他の男が私にしつこく触ったりするところを目にしても、兄様は表情ひとつ変えない。むしろそのように仕向けさえする。けれど二人きりになると荒々しく抱いてくる。かと思うと、男が私に誘惑され腑抜けになっている様子を見て面白がっていたりもする。兄様は嫉妬しているわけではなかった、というのは相手が嫉妬するに値するほどの男ではなかったから。ただその倒錯した状況に興奮しているようだった。

いつだったか私がそのことを責めると、兄様は私を膝の上に乗せて言った。

「我の妹はお前だけだよ。他の誰も我達の間には入って来られない。わかっているだろう?」
「でも…ならどうして他の女と」
「男はそういう生き物なんだよ、藍猫」
なら私は男という生き物は大嫌いだ。と思ったが、口には出さなかった。兄様は私の不服そうな顔を見て、懐から何かを取り出し、私の手に握らせた。
「これをあげよう」
それは古めかしい真鍮の鍵だった。
「これは…」
「秘密の部屋の鍵さ」
それは兄様の部屋にある隠し部屋の扉の鍵だった。頑丈そうな扉には2つ鍵穴が付いている。兄様は更にもうひとつの鍵を取り出して鍵を開けた後、私が持っている鍵でもう片方を開けるよう促した。
私はその日、初めてその部屋の存在を知り、中に入った。

「誰にも邪魔されずに昼寝がしたい時なんかはここに来るんだ」

「ここのことは誰も知らない。二人だけの秘密だ」
「二人だけ?」
「そう。ここにあるものは我にとって大切なものだけど、全部お前の好きにしていい。お前は特別だからね」
特別……その言葉の甘美な響きは私を魅了した。私はずっと誰かの特別になりたかったのかもしれない。兄様は微笑みながら私の手を取り、ソファに腰を下ろして私を上に乗せようとする。
それでも私はまだ躊躇っていた。兄様の言葉を信じなかったわけではないが、それでも釈然としない思いは消えなかった。嫉妬という黒い感情が私の中に渦巻いていた。
「藍猫」
腰に手を回しながら、低く甘い声で私を呼ぶ。渋々膝の上に乗りながら私は尋ねた。
「本当に私だけ?」
「もちろん」
「……でも、やっぱり兄様が他の女と一緒にいるのは嫌」
兄様は肩を落として苦笑した。少し楽しそうに。
「わかったよ。お前がそこまで言うなら」
抱き寄せられ、頭を撫でられる。こうして兄様に抱かれていると心底ほっとする。その手は私の背中から腰にゆっくりと下りて行った。唇を触れ合わせているうち、私の思考は急激に曖昧になっていった。

私は兄様に教えられたことをひとつひとつ懸命に実行した。玉袋を撫でながら、棒付きキャンディを舐めるように決して歯を立てず、上下に動かす…。いつも飄々としている兄様が息を荒げ、余裕をなくしているところを見るのは気分がよかった。仕返しのように兄様は私の頭を押さえて口の奥まで突き刺して来る。

 

「お前は我から離れていかないね」

すべてが終わった後、私の上に倒れ込んだ兄様はかすれた声で独り言のように囁いた。

「ずっと二人でいよう。何が起こっても」

私は兄様の汗に濡れた背中に両腕を回し、きつくきつく抱き締めた。